介護を楽にするコツ

介護を楽にするコツ

介護を楽にするコツ

私が父の所に戻ると、ヘルパーさんが弱りきっていました。「お父さんがかなづちを見つけてこいっていって聞かないのよ。〈見つからない〉っていったら、すごく怒られてしまつて…。ご機嫌斜めで、もう一時間以上もそこにすわつたままなの」父はカラーボックスの前に陣取って、探し物に夢中です。上には電話や父の常備薬の入った箱がのっていて、下の棚にはタオルや細かなものを分別してある小箱が重なっています。全部引っ張り出して、散らかし放題。夢中なので、帰ってきた私に気がつきません。「かなづちなんか渡せないでしょ。なにするかわからないから怖いしね」「そりゃそうだわ。ガラス戸をかなづちで叩かれたりしたらたいへん!」「そう思ってとぼけていたら、お父さんは怒りだして、私に〈帰れ!〉つてどなるのよ。さっきから本当に困ってたの」ヘルパーさんは泣きそうです。「でも泣きたいのは私よ。あなたは時間がくれば交代できるけど、私は交代できないのよね」と心の中でつぶやきます。だから必死で妙案を考えます。ヘルパーさんが帰ったあと、しばらくは父の行動を見守ります。気がすむまで目いっぱいやらせないと、かえってかなづちに執着してしまうからです。

 

 

さんざんやって父が疲れてきたころあいを見つけ、そばによって黙ってかたづけ始めます。「ないんだよ。どうしても見つからないんだよ」「困ったね」私はかたづけているのですが、父といっしょに私も探しているようなふりをしてみせます。お財布を探すときの要領です。父が私へ信頼感を寄せれば、もうこつちのものです。「最近めったに使うことがないから、奥のほうに入り込んでしまったのかしら…」「そうだなあ」「きっとそのうち見つかるよ。捨ててないからさあ。ごはん食べたらまた探してみようよね」食事を終えたころには、父はもうすっかりかなづちのことなど忘れてしまっています。正しい使い方のできなくなった父に、かなづちなど危ないものは渡せません。日の届かない所にしまって家族が管理します。ところが父のようにふいに思い出すことがあるのです。そんなときは、言葉でいくら危険だからと説得しても、混乱は治まりません。私は父と同じ思いなのだと行動で示して、父の気持ちを安定させるようにしています夫曽ある程度気がすむまでさせることが介護を楽にするコツです。


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