遠距離介護

遠距離介護

今わが家で頭が痛いのが自転車です。昔からオヤジが乗っていた自転車が軒先に置いてあります。オヤジは今でもそれに乗ろうとします。廃棄してしまうのがいちばんよいのですが、私や姉が帰省した際には役に立つので、廃棄するわけにもいきません。また廃棄したら、新しいのを勝手に買いに行こうとするでしょう。隠すといっても自転車を隠せるような場所はありません。オヤジの目を盗んで乗っていますが、あれでけっこうよく見ているので、油断ができません。

 

結論からいうと、遠距離介護のほうが楽だと思います。確かに遠距離移動は肉体的負担、経済的負担、時間的制約、どれをとってもたいへんです。ところが、親たちを呼び寄せた場合にはそれ以上にさまざまな問題が山積みしています。痴呆症の老親には環境の変化は最もリスクが大きく、混乱と不安を高めてしまいます。そんな老親が私たちの生活に近づけるはずはありません。これまでどおり老親たちが生活していれば、そこへ他の姉妹たちが気軽に訪ねてきます。介護を分担できます。親類も近くに大勢住んでいますから、そちらの協力もあおげます。私たちのもとへ老親たちを引き取ると、そうした人たちの手伝いがまったくあおげなくなってしまいます。介護のすべての負担は呼び寄せてしまった者に集中してしまいます。老親たちにこれまでの人間関係を精算させるのも酷なことです。

 

 

痴呆も末期になると、起きていられる時間が少なくなつてきます。ほうっておくといつまでもベッドの中です。「今日はずつと寝ていて、とても楽でした」と、ヘルパーさんのメモが残されています。たぶん二時間以上たってから声をかけたのでしょう。父の昼寝は日に二回、 一回の昼寝に二時間以上もほうっておくと、起き上がろうとする意欲がかえって減退してしまいます。私は時間を見はからつて起こします。目安は一時間から一時間半ぐらいです。途中で目だけ開くことがあります。そのタイミングを利用します。

 

…オヤジにその気がないとなにをやるにも介護者はたいへんです。こたつで寝てしまったオヤジをみんなでふとんに連れて行こうとしても、まず不可能です。みんなでああせいこうせいというのでFつるさいなあ」と感じているようで、せっつけば意固地になるだけです。そんなときはオヤジがひと眠りして目が覚めるのを待つしかありません。


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